Aさんは喜んだが、すぐに糖尿病で足を切断した知人の話を思い出した。
「医師も商売だから患者に嫌がることは言わず、遠回しな物言いをする。でも、患者はその言葉の意味を正確に知らなければ後悔する」
Aさんは、医師に再度「インスリン注射は必要ないのですね」と質問した。医師は笑って、「今回の検査の限りでは必要ありません」と答えた。
Aさんに処方されたのは、ジャディアンス錠10ミリグラムとトラゼンタ錠5ミリグラム。前者はSGLT2阻害薬で、尿への糖排泄を増やすことで結果として血糖値を下げる。後者はDPP-4阻害薬で、体内でインスリン分泌を促す物質の作用を強め、血糖値を下げる薬だった。