実用化が近づくアルツハイマー病新薬「レカネマブ」さらなる最新ポイント
MCIの前段階「プレクリニカル期」に注目
最近始まった試みが、MCIよりさらに前、アミロイド斑が蓄積し始めているが認知機能は正常な「プレクリニカル期」での薬の投与だ。
「アミロイドβが減少しても、認知機能の低下を遅らせるといった臨床的な効果がなければ意味がない。アミロイドβの除去は早ければ早いほどいいと予想されます。レカネマブは、早期アルツハイマー病を対象にした臨床試験とは別に、プレクリニカル期からの投与の臨床試験(AHEAD試験)が始まっています」
AHEAD研究では、プレクリニカル期でも「アミロイド斑の蓄積がはっきり見られる人」と「アミロイド斑の蓄積が始まったばかりの人」を対象にした2つの研究が実施中だ。
プレクリニカル期での投与の臨床研究はソラネズマブ、ドナネマブという薬でも行われている。
「ソラネズマブでは残念ながら認知機能の低下を遅らせる効果がないという結果が、今年3月に発表されました。ソラネズマブはアミロイドβ単体を除去する作用はありますが、アミロイドβがくっつき塊になったアミロイド斑を除去する作用がないため、アミロイド斑が蓄積したプレクリニカル期では力を発揮できなかったのかもしれない。しかしネガティブな結果であったものの、発見がありました」
それはまず、プレクリニカル期であっても4年半ほどで認知機能がわずかに低下すること。次に、プレクリニカル期であってもアミロイド斑の蓄積が多いほど認知機能低下が進むこと。
「やはり薬の投与は早いほどいい。プレクリニカル期のうち、アミロイド斑が蓄積し始めた段階で薬の投与を始められれば、アルツハイマー病の発症をより抑えられることが期待できます」
次週も、アルツハイマー病治療の最前線をお届けする。