いないはずの人が見える…「幻視」の背後に潜む「目の病気」
こうした現象が数分から数時間持続し、治るまで何年も続く場合もある。
「この疾患は若い人から高齢者までかかる恐れがありますが、目立つのは若い人。EBウイルスに感染した時の脳の炎症が原因ともいわれます。小児期のものの多くは一過性で過剰な心配は必要ありません」
成人の場合は片頭痛との合併が多く、うつ病や統合失調症でも同様の症状が見られることがあるという。高齢者で目立つのはやはり認知症による幻視だ。
「認知症による幻視はレビー小体型認知症が最も多いのですが、パーキンソン病やアルツハイマー型認知症、血管性認知症でも報告されています」
周囲の人には見えない人やモノが明瞭に見える目の病気が「シャルル・ボネ症候群」だ。1760年にスイスの科学者シャルル・ボネが最初に報告した。
「87歳の祖父が、両側白内障による視覚障害を患い、その時に経験した幻視を記録したものです。記録には、『健康に恵まれ、飾り気がなく、記憶も判断も保たれ、まったくの覚醒状態で、時折、目の前に外界とは無関係に、男や女、鳥、場所、建物などの姿が見え、多彩な動きをする』と記載されていたようです。その後の調査で緑内障や加齢黄斑変性症でも幻視が見られることがわかっています」