認知症の人が睡眠障害を起こすとどんな問題が生じるのか
また、日中に昼寝をして過ごしていると、家族や周囲と生活リズムが逆になって交流する時間が減り脳が刺激されず、認知機能の低下速度も速まります。ほかにも不眠が続くと、もうろうとした状態になる「せん妄」を起こして不安を感じやすくなり、イライラから攻撃的になるケースも少なくありません。
睡眠障害があると本人のQOL(生活の質)低下だけでなく、介護する家族の負担が増え、家族の生活に支障を来す恐れがあるのです。
夜間不眠の予防策は5つ挙げられます。①朝日を浴びて日中に睡眠ホルモンのメラトニンの分泌を抑え、夜にしっかり分泌させるようにする②散歩やデイサービスなど日中の活動時間を増やして昼寝を避ける③就寝時間を決めて寝る④カフェインを含む飲料は極力避ける⑤中途覚醒の頻度を減らせるよう就寝前にトイレを済ませておく。
ショートステイの利用は、デイサービスに比べて滞在時間が長く、不安を感じてストレスになりやすい。ストレスは脳血流量を低下させ、認知機能の低下速度を速める可能性が高いので、まずは自宅でできる生活改善から取り組むといいでしょう。それでも夜間不眠が改善しなければ、かかりつけ医に睡眠導入剤の処方を相談するといいでしょう。
▽伊藤たえ(いとう・たえ)2004年浜松医科大学医学部卒業、06年同大学脳神経外科入局、13年河北総合病院、16年山田記念病院を経て、19年から菅原クリニック東京脳ドック院長を務める。