がんの治療はなくなってもその人の人生が終わったわけじゃない
「体調はどうですか?」(私)
「歩くのもやっと。食事も寝たまま食べることが多いです。本人は大丈夫だって言ってるんだけど」(夫)
2020年2月から当院で在宅医療を開始されている95歳の女性は、骨髄異形成症候群と慢性心不全を患っています。旦那さんと息子さんとの3人暮らしです。
現在は輸血をしながら、積極的な治療は行わず症状緩和の治療のみを行う「ベスト・サポーティブ・ケア(BSC)」により自宅で過ごされています。積極的な治療とはいわゆる外科治療や化学療法、さらには免疫療法、放射線治療などを指します。
BSCは有効的治療法がない場合に、患者さん自らの希望で身体的な苦痛や治療の副作用の軽減と生活の質(QOL)の維持・向上を目指し行われるものです。
一見、医療の一方的な撤退宣言のようにも見えますが、そうではありません。症状によっては食事療法や運動療法などのケアも行いながら、あくまでも残された患者さんの生活を最後まで満たされたものにするためのものです。緩和ケアと同じような意味で用いられることもあります。