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新井平伊順天堂大学医学部名誉教授

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

「脂質異常症」放置するとどうなる? 認知症の発症にも関与

公開日: 更新日:

しっかり運動しているのに、悪玉コレステロールが高い理由

 Yさんが健康診断で「LDLコレステロールが高い」と言われるようになったのは、40代前半とのこと。釈然としなかったそうで、その理由は「こんなに運動をしているのに、コレステロールが高いなんて!」という気持ちがあったから。

 実際Yさんの運動量は相当なもので、週3回はスポーツジムに通い、汗を流している。それでも、健康診断では毎年「LDLコレステロールが高い」。

 実はLDLコレステロールは、運動だけではなかなか下げることができないのです。コレステロールは生きていく上で必要な成分で、体内に再生産する仕組みが備わっています。エネルギー源である中性脂肪は運動すれば減りますが、コレステロールはエネルギーにならないので、運動しても減りません。

 コレステロールは、運動よりも食事の見直しが重要。悪玉コレステロールが高いのは、脂質異常症の発症や進行に大いに関係しますので、健康診断などで指摘されているようなら、まずは生活習慣改善、それでダメなら薬物治療の検討が必要です。

 さて、認知症の連載で、なぜここまで脂質異常症の話をするのか。それは、脂質異常症が認知症の発症に関与するとみられているからです。

 そもそも脂質異常症は前述の通り脳卒中の危険因子で、血管性認知症のリスクを高めます。さらにはアルツハイマー型認知症の関連も報告されています。脂質異常症の中でも、高LDLコレステロールと低HDLコレステロールがアルツハイマー病の発症リスクに影響を与えるとされています。

 ただ、脂質異常症がアルツハイマーの発症を抑制するとの報告もあるんですね。「脂質異常症=アルツハイマーの危険因子」とする一定の見解はまだ得られていない状況ですが、血管性認知症との関係は明らかなわけですから、「認知症の発症前に対策を講じよう」と常から言っている私としては、コレステロールが高ければ、速やかに生活の改善、必要に応じての薬の治療を開始してほしい。

 その後のYさんですが、最近、LDLコレステロールを下げる薬を飲み始めたそうです。

 Yさんと同様「コレステロールが高い」と言われていたテニス仲間が脳梗塞を起こしたことがきっかけ。幸いにも命に別条はなく、後遺症もなかったそうですが、その仲間の話を聞いて「コレステロールが高いのは、まずいんだな」と考えるようになったとのことでした。

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