高齢者の再手術は初回からの期間が短いと「癒着剥離」の難度が上がる
2020年にいわゆる定年で主任教授を辞し、大学の理事兼特任教授となってから、およそ3年半がたちました。かつてに比べると件数は減りましたが、いまも病院で現役の外科医として手術を続けています。このところ、主に執刀しているのが「高齢者の再手術」です。
心臓手術の多くは“賞味期限”があります。たとえば、冠動脈バイパス手術でバイパスとして使う血管の耐久性は、足の静脈であれば「およそ13~15年」といわれています。内胸動脈を使えば一生もつこともありますが、その間に他の冠動脈狭窄が進むケースも多く、再手術がゼロにはなりません。また、心臓弁膜症で弁を交換する手術で使われる生体弁は、35歳以上では15~20年くらいで硬くなったり、穴が開いたりして、再び交換しなければなりません。
いずれも、患者さんの持病や全身状態、生活管理の状況によって変わってきますが、最初の手術からそれくらいの年数が経過した時点で、再手術が必要になるケースが少なくないのです。ほかにも、初回の手術とは別の心臓トラブルが起こって再手術が必要になる場合もあります。