著者のコラム一覧
天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

「孤独」が心臓病のリスクをアップさせるのはどうしてなのか

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「孤独」は心臓病の発症リスクを大きく上昇させる──。以前から複数の研究で明らかになっている結果が、今年6月、米国であらためて報告されました。

 米厚生省が提出した「私たちの流行病:孤独の蔓延と孤立」という報告書によると、孤独=社会とのつながりの欠如は、心臓病のリスクを29%高めるといいます。ほかにも脳卒中のリスクが32%、高齢者の認知症のリスクは50%高まり、早死にする可能性も60%も高くなると記されています。

 なぜ、孤独は心臓病の発症リスクをアップさせるのか、はっきりした理由はわかっていませんが、「ストレス」が大きく関係していると考えられています。われわれが孤独を感じているとき、脳には大きなストレス=精神的苦痛がかかることがわかっています。ストレスを受けると交感神経が優位になり、神経伝達物質のアドレナリンや、ストレスホルモンのコルチゾールが大量に分泌されます。アドレナリンは心拍数を増加させたり、血流を増やして血管を収縮させる作用があり、血圧が上昇します。

 コルチゾールも血管を収縮させるうえに血中ナトリウムを増加させるので血圧が上がります。また、コルチゾール濃度が上がると血糖値やコレステロールの数値が高くなります。ストレスは、高血圧、高血糖、高コレステロールという心臓病の代表的なリスク因子を揃える原因になり、心臓にとっては大敵となるのです。

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