高齢者の再手術は初回からの期間が短いと「癒着剥離」の難度が上がる
ほかに癒着剥離のリスクを減らす方法として、「減圧」という手段があります。麻酔を使って心臓が血液を送り出す際の圧力を低下させたり、人工心肺装置を使って心臓内の血液を抜いたり、血液循環を完全に停止して、圧力をゼロにした状態で剥離を進めていく方法です。癒着してくっついてしまっている部分と、正常な部分が同じ圧力になるので、両方の側から同じ強さの力で引っ張ることができて操作がしやすくなるうえ、血液の抜けた心臓はぺちゃんこになるため、剥離する部分も小さくなります。
ただ、人工心肺装置を使ったり、低体温にして循環を停止させると生体に対する負担は大幅にアップするので、短時間、長くても60分程度で処置を終わらせなければなりません。そこで時間をかけると、かえって本末転倒になってしまうため、やはり技術が求められます。
次回も、高齢者の再手術について詳しくお話しします。
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