【クリニカルパス】手術での「抗菌薬の適正使用」が進んだ大きな要因
私が薬剤師になった頃は、手術後の創部感染の予防のため、抗菌薬を1週間ほど点滴し続けることがよくあったように記憶しています。それが現在は、ほとんどが「術後24時間以内までの投与」となり、心臓手術においても術後48時間までの投与期間にとどめるケースが多くなりました。術後72時間以上の予防抗菌薬の使用は、耐性菌による術後感染のリスクになることがわかり、多くの場合は「短期間の投与」となっているのです。
また、以前は使用される抗菌薬の種類も医師によりまちまちでしたが、今はかなり統一されるようになってきた印象です。たとえば、皮膚を切開するだけなら、皮膚に常在しているブドウ球菌や連鎖球菌などのグラム陽性菌だけをターゲットにすればよいので、できる限りグラム陽性菌のみ狭域に効果を示すセファゾリンなどの抗菌薬が選択されます。
しかし、大腸などの下部消化管も切開する場合には、腸管に常在するであろうバクテロイデスなどの嫌気性菌もターゲットとして加える必要が出てきます。
こうした「手術時の抗菌薬の適正使用」がここ20年ほどで一気に進んだ大きな要因として、「クリニカルパス」の活用が挙げられるのではないかと考えます。クリニカルパスとは、医療スタッフと患者さんが治療計画の情報を共有するために、標準化したルールで患者さんの治療・検査のスケジュールを時間軸に沿ってまとめたものです。