心臓を守るために若年世代は「心電図検査」を受けておく
健康診断のシーズンです。職場や自治体で行われている健診や人間ドックを受診するのはもちろん有意義ですが、心臓を守るためにとりわけ重要といえる検査についてお話しします。
突然死を防ぐためにも受けておくべき心臓検査は、小児から成人前の若年世代、働き盛りの中高年世代、リタイア後の高齢世代で変わってきます。まずは若年世代、とりわけ普段からスポーツに取り組んでいる若者に欠かせない検査が「心電図検査」です。致死性の心室細動を突然発症する「ブルガダ症候群」は心電図検査を受けた人の0.2%程度で特徴的な波形が見つかり、要精密検査となります。30~50歳代の男性に多く、男女比は10:1くらいです。この疾患はかつて若年~中年の男性が睡眠中に突然死してしまう原因不明の「ポックリ病」と呼ばれていたもので、90年代に入って死亡の原因は心室細動であることが報告され、安静時心電図波形から予測されるようになりました。
こうした若年性の心疾患、とりわけ運動している最中に不整脈を起こして突然死を招く病気の有無をチェックするため、現在は小学1年生、中学1年生、高校1年生の全員に、学校健診での心電図検査が義務付けられています。タイミングを逸して健診で心電図検査を受けられなかったなどの場合でも、あらためてきちんと受けることをおすすめします。心電図検査では、その波形のパターンによって、年齢不相応に心臓が肥大していないか、不整脈が出ていないか、先天性完全房室ブロックがないかなどがわかり、“突然死予備群”をスクリーニングできるのです。
心電図検査で異常が見つかり、さらに精密検査をして確実に心臓疾患だと診断がついた場合、先天性心疾患のガイドラインに沿って、生活制限と運動制限が指導されます。その程度によって、運動はできるがアスリートレベルの強度の運動は難しいなどの管理が必要になります。ほかにも、心臓の壁に小さな穴が開いている心室中隔欠損のような左右短絡先天性心疾患、川崎病の後遺症で冠動脈疾患があるといった子供も、同じような指導を受けます。
プロスポーツ選手を目指している子供はもちろん、そのレベルとまではいかなくても、部活動などで安心してスポーツに打ち込めるかどうかを確認するためのいちばん手軽で確実性が高い検査が心電図検査なのです。