「ヒヤリ・ハット」が多発する梅雨の歩道…糖尿病の人は特に注意が必要
実際、都内在住の15歳以上の男女3000人のアンケートをまとめた東京都生活文化スポーツ局のヒヤリ・ハット調査「降雨時の身の回りの危機」(2013年)によると、降雨時にケガをしそうになってヒヤリ・ハットしたり、受傷した経験のある人が2370人いたという。男女ともに傘に次いで履物(足元)にまつわるリスクが高く、それを経験した場所は傾斜のない歩道が男女ともトップで、傾斜の有無に関係なく歩道が男性で全体の半数、女性で4割を占めた。
滑って転倒するなど履物を原因として受傷した人は男性47人、女性72人で、それが原因で医療機関を受診したのがそれぞれ、12人と25人、入院は男性1人だったと報告されている。
「糖尿病の人は、転倒リスクに対してより注意する必要があります。健康な人に比べて足や下肢の筋量、筋力、筋肉の質が低下するうえ、足そのものや足の指の柔軟性が低下して転びやすいからです。糖尿病が進んだ人は食事から得た糖質を細胞に取り込みにくくなり、その多くを体外放出してしまいます。代わりに脂肪や筋肉を分解して生じる脂質やタンパク質からエネルギーをつくり出す異分化が進むため、筋肉がつきにくくなる。さらに糖尿病の3大合併症である神経障害を患っている人は、局所的な筋萎縮を起こすなどしてバランスを崩しやすく、歩行障害を起こしやすいのです。また、1型糖尿病の人や2型糖尿病で投薬治療中の人は飲酒などにより無自覚性低血糖に陥って転倒する場合もあります。さらに網膜症や白内障の進行により、降雨時は足元がいつも以上に暗く、見えづらくなることも原因となります」