「頭痛」の裏に心臓トラブルが潜んでいるケースがある
頭がズキズキしたり、ズーンと重く圧迫感が続いたり……「頭痛」を経験したことがないという人はいないでしょう。片頭痛や緊張性頭痛など、日本人の4人に1人は慢性的な頭痛を抱えているといわれ、とても身近な症状といえます。
そのほとんどはほかに原因となる病気がない一過性のものですが、脳卒中などの命に関わる脳血管疾患のサインであるケースもあるため甘く考えてはいけません。中には心臓病が隠れている頭痛もあります。代表的なものが「放散痛」「関連痛」と呼ばれるものです。
狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患は、心臓に血液を送っている冠動脈が狭くなったり、詰まることで起こります。血流が悪化して心臓に必要な酸素や栄養が十分に運ばれなくなるため、激しい胸痛が生じます。この痛みが、みぞおち、背中、腕、肩、あご、歯といった場所に現れるのが放散痛です。
心臓や血管の痛みも、みぞおち、背中、腕、肩、あご、歯などの痛みも、いずれも脊髄を通って脳に伝えられます。このとき、痛みが起こっている箇所を脳が取り違えると、一見、心臓とは関係のない箇所に痛みを感じます。この放散痛が、頭痛として発生するケースがあるのです。
国際頭痛分類でも「心臓性頭痛」として記載されていて、虚血性心疾患に伴う頭痛はたくさん報告されています。心臓病のリスク因子となる高血圧などの基礎疾患がある人に多く見られ、労作時や胸痛に伴って頭痛も起こるのが典型的なケースとされています。ただ、症状が頭痛だけだったり、くも膜下出血を疑うような激しい頭痛が主症状だったケースも報告されているので注意が必要です。中には、血栓で詰まった冠動脈を再灌流させると、頭痛が著しく改善したという報告もあります。
なぜ、虚血性心疾患に伴って頭痛が起こるのかについては、放散痛のほかにもいくつか原因が考えられていますが、はっきりわかっていません。
虚血によって心拍出量が減少することで脳血流が低下したり、静脈還流量が減少して脳圧が上昇するために頭痛が起こるという意見や、心筋梗塞によって放出された炎症性物質が脳血管の痛覚神経に影響を与えるためとの見方もあります。
いずれにせよ、高血圧、高血糖、高コレステロールなどの生活習慣病を抱えている人が激しい頭痛を起こした際は、心臓病かもしれないという疑いを頭に入れておいたほうがいいでしょう。