「頭痛」の裏に心臓トラブルが潜んでいるケースがある
片頭痛の原因になっている場合も
また、片頭痛が「卵円孔開存」という生まれつきの心臓の構造と関係しているという報告もあります。卵円孔開存というのは、心臓の右心房と左心房の間に小さな穴=卵円孔が開いている病態で、本来なら出生時に閉じるはずの卵円孔が、閉じないまま成長してしまったケースです。成人の15~20%が該当するといわれています。
穴が大きくない場合は特に心配することはありませんが、近年、片頭痛の原因として疑われているのです。
右心房と左心房の間に小さな穴があると、ちょっとした体の動きで心臓内の血液が行き来することになります。このように、全身から右心房に流れ込んだ静脈血と、肺で酸素を取り込んで左心房に入った動脈血が少量でも混ざる“逆流”が起こると、最悪のパターンでは静脈内にある血栓が移動して脳梗塞の原因になります。それだけでなく、セロトニンなどの片頭痛を誘導する物質が肺を通らずに、穴を通過して直接、大動脈に入ってしまうことで片頭痛を引き起こすのではないかと考えられているのです。
欧米でも日本でも、卵円孔を閉鎖するカテーテル手術を行うと、高確率で片頭痛が軽快したという報告があります。こうした例からも、片頭痛の裏に心臓トラブルが隠れている可能性があるのです。
ほかにも、頭痛とまではいきませんが、頭部の違和感が心臓トラブルと関係しているケースがあります。大動脈弁閉鎖不全症で、心臓の弁がうまく機能していない場合です。心臓の出口である大動脈弁の閉まりが悪くなり、大動脈に押し出された血液が再び心臓内に逆流する病気で、拍出された血液が心臓に戻って、再び拍出されるため、脈圧が上昇します。その分、心臓はフル回転を強いられ、首を通って脳へ血液を送っている頚動脈の拍動が強くなります。さらに、就寝時に横になると下半身の血液が心臓に戻ってくるのでより拍出量が増加し、「頚動脈が激しくドクドクして眠れない」と訴える人もいます。こうした頭部付近の症状から、大動脈弁閉鎖不全症の病状がわかるケースもあるのです。
頭痛が心臓病のサインになっている可能性もあるということを覚えておくといいでしょう。
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