最後はほぼ眠れなくなって…女道楽の内海英華さん語る変形性股関節症

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「そこはネジなんや」と思っておかしかった

 正月過ぎから、見事に鎮痛剤が効かなくなりました。それでも仕事は休めません。最後は能登の震災のチャリティーイベントでした。なまじ踊れるもんですから周りから頼まれて、痛いのに踊りました。「ひと月休ませてもらうからいいわ」と思って(笑)。

 手術の怖さはそれほどなかったです。39歳のときに子宮筋腫で人生初の手術を受けた時はキズができることや怖さでだいぶ荒れましたけど、今回は余裕。なんぼ怖くても、麻酔で寝てる間に終わってるわけやからね。

 術後、レントゲンを見て笑ったのは、骨盤にネジ山がくっきり見えたこと。大腿骨頭の受け皿にチタンという金属を使ったようで、チタンと骨盤がネジで留まってるんです。「こんなに医療が進歩しているのに、そこはネジなんや」と思っておかしかった。この前、飛行機に乗ったけれども金属探知機は鳴りませんでした。ネタ的には鳴ってほしい気持ちもあるんですけども……(笑)。

 術後2日間はベッドを下りられませんでした。特に1日目は上体を40度以上起こすと股関節が外れる可能性があるとかで、ほぼ寝たきり。でも3日目からは松葉づえでの歩行練習です。それから1週間も経たないうちに1階のリハビリセンターに下りてポールを支えに横歩きをしたり、体重移動やチューブを使って脚の内筋をつける運動などをやっていました。

 その病院では午前と午後の2回リハビリをするので毎日ヘトヘト。夜10時まで起きているのがやっとでした。消灯時間は決まっていないので、入院前には韓国ドラマの“イッキ見”や好きなパズルを思う存分楽しもうと思っていたのに、それどころじゃなかったです(笑)。

 24歳のときに肺炎で死にかけたことをはじめ、肺炎は計4回、子宮筋腫や腸炎など、けっこう病気は経験してきたんです。でも、今回はいちばん何にもできなかった。「芸人なんてどこで野垂れ死んでもええわ、自分のケツは自分で拭くわ」くらいに思っていたんですけど、それは何でも自分でできると思っていた“驕り”でした。何にもできない時期を体験して、普通のことができるありがたさを知りました。何より看護師さんの仕事がいかに大変で大切かを実感しました。

 手術から3カ月半経った今は、周囲には気付かれないほど普通に歩けています。でも左脚はまだ違和感があって真っすぐ立てないし、切ったところが固まって動きが悪いんです。だから、ストレッチと筋トレに励んでいます。意外にも、お尻の筋肉が弱ると脱臼しやすくなるんですって。しかも脱臼したらものすごく痛いから、全身麻酔ではめ直すんですって。それを聞いて、少し運動を増やしましたわ(笑)。

(聞き手=松永詠美子)

▽内海英華(うつみ・えいか) 1960年、大阪府生まれ。78年に旭堂南陵へ女流講釈師として入門。81年に漫才師の内海カッパに師事。大阪で唯一の女道楽(三味線演芸)として舞台で活躍し、寄席三味線奏者(お囃子)としても知られる。ラジオ関西「内海英華のラジ関寄席」、ラジオ大阪「hanashikaの時間。」にレギュラー出演している。

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