健康寿命は経済力で決まる(3)入院中の食事代に見る日本の貧しさ
しかし、病院の台所は厳しい状況が続いています。食料品の値上げラッシュはとどまることを知らず、しかも急激な円安による輸入食材の急騰、さらには米不足も加わって、ほとんどの病院で給食は赤字に陥っています。
家計を預かる奥さんたちは、1日の1人分の食費が2010円なんて、高すぎると思うかもしれません。しかし病院給食には、管理栄養士や調理師の人件費が上乗せされますし、患者ごと、病気ごとに献立や材料を変える必要も生じます。手間と金がかかるのです。
このままの状態が続けば、多くの病院が食材の質を落とさざるを得ないでしょう。「まずい病院食」の復活です。保険からの給付金を増やせば、と思う人もいるはずです。しかしそれは、現役世代の健康保険料をさらに引き上げることにつながります。そうなればワンコイン弁当すら、贅沢になってしまうかもしれません。
インバウンドの昼食代にも満たない金額で入院の3食を賄わなければならない。築地で見られる日本の貧しさは、かたちを変えて、医療の世界にも影を落としているのです。 =つづく
(長浜バイオ大学バイオデータサイエンス学科・永田宏教授)