著者のコラム一覧
青島周一勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

命を延ばす薬(4)心不全に対するACE阻害薬…延命効果は41日?

公開日: 更新日:

 高血圧の治療薬のひとつに「ACE阻害薬」という薬があります。ACEとはアンジオテンシン変換酵素と呼ばれる体内酵素のことです。ACEは血圧を上昇させる体内物質であるアンジオテンシンⅡの産生を促し、血圧の上昇を引き起こします。ACE阻害薬は、ACEの働きを抑えることで、アンジオテンシンⅡの産生を抑制し、血圧の上昇を抑える効果が期待できるのです。そのため、高血圧の治療薬として広く用いられてきました。

 アンジオテンシンⅡはまた、体内の水分排泄を抑えたり、血管を収縮させたりすることで、心臓のポンプ機能に負担をかけることが知られています。心臓のポンプ機能が低下した状態を心不全と呼びますが、ACE阻害薬は心不全の治療薬としても用いられてきました。

 心筋梗塞など心臓病の発症リスクが高い9297人を対象とした臨床試験では、ACE阻害薬である「ラミプリル」(日本では未承認)を投与することで、プラセボの投与と比べて、心筋梗塞、脳卒中、および心臓病による死亡が22%、統計学的にも有意に低下しました。また、心不全を有する2569人を対象とした臨床試験では、ACE阻害薬である「エナラプリル」を投与することで、プラセボ投与と比べて、死亡リスクが16%、統計学的にも有意に低下しました。

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