(8)人間ドックで兆候をつかまえたい…自覚症状あり→病気が見つかるでは手遅れも
ただし健康診断や人間ドックでは、血液検査や心電図、体重測定といった短時間で次々実施できるものが多いと思います。画像で体の中が映し出される検査でないと、脳動脈瘤や大動脈瘤、胆石、がんなどは見つかりません。毎年ではなくても、脳のMRIとCT、心臓の冠動脈のCTは10年に1回ぐらいの間隔で受けるべきだと思います。おなかの検査では超音波検査やCTです。
ただし、これらの検査は大病院ではすぐにはやってくれません。患者が医者に「特に症状がないんですが、友達がこの前、末期のがんが見つかったとかいう話を聞いて、心配なのでおなかの超音波検査をお願いします」と頼んでも断られます。
病気じゃない人の検査の費用は保険診療ではないからです。それに検査は臨床検査技師さんが行います。何でもない人の検査を評判の悪い医者が彼ら彼女たちに依頼すると「あのバカ医者が仕事を増やすせいで家に帰れないじゃない!」となって、ますますそのお医者さんの評判が落ちるのです。医者は病院内での評判がその実力をささえているのです。
「近くの病院で心臓病だからとクスリをもらっているのですが、この10年間、心電図検査も何もしてもらえないんです。自費でいいですから心臓超音波検査とかやっていただけませんか。今診てもらっているセンセイにここに来たことがバレたら困るんで」──こういう患者さんが増えることでしょう。
デジタル・トランスフォーメーションとかいう厚生労働省のおままごとのような計画では、よその病院で受けた診療や検査まで、当局や隣国に掌握されてしまうのかも知れません!(おわり)
(南渕明宏/昭和大教授)