冬の風呂で命を守るには「熱中症」に注意する…ヒートショックだけじゃない
これから2月初めにかけて“立春寒波”が到来し、10年に1度の冷え込みが予想されている。そんな日は熱い湯につかってじっくり温まりたいものだが、冬の風呂では注意しないと命の危険がある。昨年12月、歌手の中山美穂さん(享年54)が、入浴中に起きた不慮の事故で亡くなったことは記憶に新しい。風呂で命を守るためのポイントを東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身氏に聞いた。
冬の風呂での死亡事故というと、「ヒートショック」を思い浮かべる人がほとんどだろう。寒い環境と暖かい環境との温度差が10度以上になるような激しい温度変化によって血圧の急激な上下動が起こり、命に関わる心血管トラブルを引き起こす現象だ。
しかし、入浴中の死亡事故の主な原因はヒートショックではなく、浴槽内で熱中症を起こしたことによる「溺死」だという。
「日本で起きる溺死の約60%は風呂で発生しています。年間でおよそ1万人が亡くなっていて、とりわけ冬には1日で数十人と、急増することがわかっています。以前は、入浴時の事故はヒートショックによる心血管トラブルが原因とされていましたが、最近の研究で、ヒートショックでの浴室事故死は、入浴直後の血圧低下を含めても7%程度に過ぎません。浴槽死亡事故の8割以上は、長時間の入浴によって熱中症を起こし、意識を失ったための溺死と推察されているのです」