理想の睡眠時間といわれる「7時間」の良質な睡眠はなぜ必要か?
一見、健康な人でも睡眠中に呼吸停止を繰り返す睡眠時無呼吸症候群(SAS)の人は多い。まだ見つかっていない人を含めると、その患者数は2200万人に及ぶとの試算もある。ハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行医師が言う。
「この病気が怖いのは、高血圧、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病などのリスクが3~4倍高く、循環器疾患の発症リスクを5倍にするほか、うつ病や認知症のリスクが高まることです」
睡眠時無呼吸症候群の人は一晩中、窒息や低酸素状態からの酸素吸入を何度も繰り返しているわけで、酸素濃度が乱高下する。これは低酸素状態が続く以上に体に負担となる。本来、睡眠中は休んでいるはずの交感神経の活性が高まり、睡眠中の自動調節機能のバランスが崩れて体内のホルモン分泌に異常を生じ、血圧を上昇させ、炎症を高進させる。
「酸素を使って細胞に必要なエネルギーを産生するミトコンドリアは、全身の細胞一つ一つに数百以上存在しています。睡眠時無呼吸症候群による低酸素状態と酸素濃度の乱高下は、エネルギーの生産効率を低下させ、エネルギー不足を招き起床時の疲れにつながるのです」