敦賀気比が北陸勢初V センバツが“東高西低”なぜ様変わり?
「中学校のクラブ活動で軟式野球をやっていた選手と、中学生から硬式を経験した選手では、高校入学後に雲泥の差があります」と、甲子園で全国制覇の経験もある強豪校の監督がこう言った。
「投手はさほど関係ありませんけど、軟式をやっていた子は守備と打撃で大きなハンディを背負います。軟式ボールは危険を避けるため、以前と比べてかなり軽く、軟らかくなっている。打撃は上から叩き付けて大きく弾ませるか、極端なアッパースイングでボールを押し込むように打つクセがついてしまっているため、高校に入ってからなかなか硬式ボールに対応できないのです。それにボール自体が飛びにくくなっているから、軟式は内外野の守備位置が極端に浅い。硬式と比べて10メートル近く前を守るポジションも中にはある。軽いボールを短い距離しか投げていないのでは、肩も弱くて当然ですよ」
中学時代に硬式を経験することが大きなメリットになるのだから、北の方の学校は競って硬式経験者を集める。そうやって地域のレベルも上がっていった。スポーツライターの美山和也氏がこう言う。
「特に東北には新規のクラブチームの設立を歓迎する土壌があります。都市部なら選手の取り合いになるのでしょうが、土地が広いこともあり『あなたのチームはこの地域からこの地域まで。この範囲の中で勧誘してください』と、うまくすみ分けています。94年から巨人が始めたジャイアンツカップ(硬式クラブの中学生学年別日本一を決める大会)の影響で、クラブチームごとの交流が増えたことも、北の方の地域が強くなったひとつの要因だと思います」