「緩急より強弱で」 権藤博氏がマー君の“一発病”克服に処方箋

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 そのノムさんに頼まれて、田中にこんな話をしたことがある。

「同じ真っすぐでも、一球一球スピードを変えてみる。間合いに変化をつけたり、球離れを遅くしたり早くしたりする。キャッチボールのときから遊び感覚でそういうことをしたらいいよ」

 よく、投球で最も大事なひとつに「緩急」が挙げられるが、打者の「目」と「間」を狂わせるには実はそれ以上に効くのがこの「強弱」だ。150キロと145キロの真っすぐを投げ分ける。スライダーでも140キロと130キロとスピードに差をつける。緩急ではなく強弱。田中の一発病を治す特効薬があるとすれば、これだと思う。

 もうひとつ。本来、田中の武器は真っすぐとスライダーだった。そこに、スプリットが加わって、明らかにそれまでとは配球の比率が変わった。スプリットは「魔法の球」である。打者の手元でストンと消えるように落ちる田中のスプリットに、相手のバットが面白いように空を切る。この「魔法の球」が13年の24勝無敗というとんでもない成績をもたらし、ヤンキース入りの道を開いた。

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