「禁止薬物」垂涎の市場 ロシアン・マフィアが日本を狙う
前回の東京五輪マラソンで銅メダルを獲得した円谷幸吉選手は、次のメキシコ五輪での金メダル取りを宣言したものの、五輪開催年の1月、「父上様母上様」で始まる遺書を残し自殺した。27歳の若さで自ら命を絶った理由はいろいろいわれているが、メダル取りの重圧もあったに違いない。
WADAに報告された事例では、マフィアによる選手への接触の仕方は巧妙だ。
薬漬けにしようと狙った選手に直接コンタクトを取るのではなく、その指導者を抱き込む例が大半だ。
教え子が五輪でメダルを獲得すれば、コーチとして箔が付き、その後も食いっぱぐれがない。五輪の代表選考会や五輪本番前に、信頼を寄せるコーチから禁止薬物を「サプリメントの一種だ」と勧められれば、何の疑いも抱かずに服用する選手は少なくないだろう。
実際、米国でも、13年のドーピング検査で陽性反応が出たロンドン五輪陸上4×100メートルリレー銀のタイソン・ゲイはメダルを剥奪された際、「コーチに勧められたサプリメントを飲んでいただけだ」と語っていた。