元ソフトバンク捕手の田上秀則さん 今は母校で後進の指導
「僕なりに頑張ったんですが、当時は谷繁(元信氏=元中日監督)さんの全盛期。ガッチリとホームベースを守っていて、一軍に上がっても立ち入る隙がなかった」
そして4年目のオフに戦力外通告。この時、引退を考えたという。
「やりきった感が強かったから、もういいかなと。ところが親父に『せっかくプロ野球選手になれたんやないか。なれん人のためにも、もうちょっと貫き通せ』と説得されて、ワンチャンスやと思うてソフトバンクの入団テストを受けたんです」
ソフトバンクには名捕手・城島健司がいたが、米マリナーズへ移籍。正捕手不在となったチーム事情も追い風となった。
「うれしいことに、当時の王貞治監督(現GM兼会長)の目に留まったようで、何とか合格。入団後も根気よく使ってくださり、その後の好成績につながりました。間違いなく大恩人です」
ソフトバンク移籍は06年。その後、一軍出場とともに長打力に磨きがかかり、ホームランを量産。正捕手の座に定着した09年は開幕から打ちまくり、監督推薦でオールスター戦に初出場。そしてパ・リーグ第4位の26本塁打、80打点の成績を残し、ベストナインに選抜された。だが、翌10年から故障やケガに泣かされ、13年のシーズンを最後にユニホームを脱いだ。
「僕が育てた部員が、プロに進めたらうれしいよね。それが、僕の野球人生でお世話になった方々への恩返しだと思います」
田上新監督の暑い夏がもうすぐ始まる。
(取材・文 高鍬真之)