巨人は同じ所をぐるぐる回ってねえか?
「歴史と伝統を誇る我が栄光の巨人軍を立て直すためだ。高橋はまだ若い。野球のイロハを知らん。そこへいくと、原は名将と言われとる」
「言われてませんよ」
「少なくとも、巨人軍の何たるかを知り尽くした男だ」
「巨人軍の何たるかってナンですか?」
「すべてがトップダウン。本社のお眼鏡にかなう采配。カネで選手の頬っぺたをひっぱたく手法に文句を言わん性格。次から次へとライバルチームの最強選手を引き抜いて使い捨てる。それらを当然と思って与えられた戦力を、さも自分が育てたような顔をして笑っていられる狡猾さ。本社に対する腰の低さ、ゴマスリ、そういうことを裏でやりながら、一見さわやかに采配を振る。それらの才能がすべて備わっているのが、原辰徳だ!」
「3度目ですよ?」
「三度目の正直ということもある! 巨人ファンは、原辰徳の帰りを今か今かと待っておるんだ」
「待ってませんよ!」
「ああ! オレには全国津々浦々の巨人ファン1億人の万雷の拍手が聞こえる!」