著者のコラム一覧
岡邦行ルポライター

1949年、福島県南相馬市生まれ。ルポライター。第3回報知ドキュメント大賞受賞。著書に「伊勢湾台風―水害前線の村」など。3・11後は出身地・南相馬中心に原発禍の実態を取材し続けている。近著に「南相馬少年野球団」「大島鎌吉の東京オリンピック」

日本人初8m超えのため 山田宏臣さんは“8”にこだわリ続けた

公開日: 更新日:

「スポーツをやるだけで給料がもらえる。まるで月給ドロボーだ」と、苦笑していた山田だが、徐々に不安になる。同僚社員は残業もいとわず仕事をこなしていたからだ。

■知恩院の医師団を片足ケンケン

 引退したら俺は果たして出世できるのか――。

 オリンピック選手と企業の一社員というはざまに立ち、山田は悩んだ。それを解消するには肉体にムチ打ち、ジャンプに懸けるほかなかった。京都の朝隈を訪ね、過酷なトレーニングに耐えた。知恩院の84段の石段を片足ケンケンで4段抜き、5段抜きして駆け上がる。これを1往復1セットとして40セット以上。約2時間でこなし、脚力を鍛え、瞬発力を高めた。ヘドを吐いて倒れると朝隈は1万円札を手に叫んだ。

「おーい、山田。これが見えたら上ってこい!」

 こうして山田は東京とメキシコのオリンピックに出場した。

 70年6月7日、神奈川県小田原市での実業団・学生対抗陸上競技大会で大悲願である、日本人初の8メートルジャンパーになった。39年ぶりに南部忠平(走り幅跳び元世界記録保持者、32年ロス五輪三段跳び金メダル)の7メートル98を3センチ上回る8メートル01を跳んだのだ。山田は号泣しつつ朝隈に報告した。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「とんねるず」石橋貴明に“セクハラ”発覚の裏で…相方の木梨憲武からの壮絶“パワハラ”を後輩芸人が暴露

  2. 2

    フジ火9「人事の人見」は大ブーメラン?地上波単独初主演Travis Japan松田元太の“黒歴史”になる恐れ

  3. 3

    PL学園で僕が直面した壮絶すぎる「鉄の掟」…部屋では常に正座で笑顔も禁止、身も心も休まらず

  4. 4

    石橋貴明のセクハラに芸能界のドンが一喝の過去…フジも「みなさんのおかげです」“保毛尾田保毛男”で一緒に悪ノリ

  5. 5

    三浦大知に続き「いきものがかり」もチケット売れないと"告白"…有名アーティストでも厳しい現状

  1. 6

    松嶋菜々子の“黒歴史”が石橋貴明セクハラ発覚で発掘される不憫…「完全にもらい事故」の二次被害

  2. 7

    伸び悩む巨人若手の尻に火をつける“劇薬”の効能…秋広優人は「停滞」、浅野翔吾は「元気なし」

  3. 8

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した

  4. 9

    フジテレビ問題「有力な番組出演者」の石橋貴明が実名報道されて「U氏」は伏せたままの不条理

  5. 10

    下半身醜聞の川﨑春花に新展開! 突然の復帰発表に《メジャー予選会出場への打算》と痛烈パンチ