大栄翔が初優勝 平幕V続出「戦国時代」の裏の“角界の凋落”

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朝乃山は「稽古していないのと同じ」

 古株の角界OBは、「全体的な稽古不足」と前置きし、学生相撲出身の力士が増えたことを指摘する。

「学生相撲はトーナメント形式。つまり、一発勝負で、大相撲の本場所とは調整法が異なる。学生相撲のそれは、いわば『試験前の一夜漬け』。トーナメントは大体1日で終わり、その日のみ全力を出せればいい。大相撲の本場所は15日間もある。約半月、神経を研ぎ澄ませ、強さを維持しなくてはいけない。本場所直前の追い込みも大事だが、何より継続した稽古で強い体をつくらないと簡単にケガをしてしまう。学生時代の調整法に慣れきっている力士では、日々の稽古量もたかが知れていますよ」

 大関朝乃山は今場所前、幕下相手に15番、20番取って調整したという。しかし、「幕下相手に大関がいくら相撲を取っても稽古にならない。20番? そんなの稽古をしてないのと同じですよ」とは前出の中澤氏。その朝乃山も学生相撲出身だ。

「近年は何事も効率、効率の時代ですからね。『黙って四股を踏んでおけ』と指示しても、今の力士は稽古方法に納得がいかないとロクに動かない。ベテラン力士なら『量より質』でもいいが、若い力士は『質より量』という時期もある。昔の大相撲はそれこそ、へどが出るまで無理やり稽古をさせていた。誰かに強制されない限り、自分を追い込むのはなかなか難しいもの。その意味では、弟子に納得させた上で猛稽古をさせられない親方衆の指導力不足もあるでしょう」(前出の角界OB)

 力士の大型化も無視できない。もっか幕内の平均体重は156キロ。160キロ台だった一時期に比べればまだマシだが、それでも巨漢のハワイ勢が出てきた前と後では、明らかに増加の一途をたどっている。稽古量不足の上に太ってばかりでは簡単にケガをしてしまう。もはや協会が掲げている「土俵の充実」とは真逆。左足首を負傷し、途中休場した大関貴景勝などは、175センチの上背に対し、183キロ。明らかに重量過多だ。

 ちなみに先場所の貴景勝の前の大関の優勝となると、17年1月場所の稀勢の里(現荒磯親方)まで遡る。今後は横綱大関が優勝するより、平幕が賜杯を手にする方が多くなりそうだ。

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