ロッテ二軍コーチに就任 開幕半月で一軍行きを命じられた
時刻は正午だった。
「まだ開幕して半月しか経っていませんよ」
「上(一軍)は打てないんだよ」
「だからって、急に言われたって無理ですよ」
「もう決まったことなんだ。2人はこっちに向かっているから」
2人とは一軍から二軍に配置転換になるコーチのことだった。新幹線の中で当日の相手投手の投球傾向や打者の対戦成績など、ありきたりのデータを調べて一軍に合流した。
山本監督は私の引退試合を許可してくれた。普段は優しいのだが、ユニホームを着ると豹変する。瞬間湯沸かし器のように熱くなり、見境がなくなってしまう性格だと知った。
■灰皿を飛ばす指揮官
ミスがあったり、チームが負けたり、気に入らないことがあると、灰皿が飛んでくるほどだ。だから、選手は監督の顔色をうかがいながらプレーしていた。コーチが手を差し伸べようとすると、「選手を甘やかすな!」と一喝される。周囲の意見には耳を貸してくれない。選手、コーチは味方であるはずの監督と戦っているような状態だった。