アーチェリー男子個人・団体「銅」古川高晴<2>レジェンドを狂わせた大会直前の1カ月間
思わぬ結果に放心しながら選手村に戻り、自室にこもった。
「全然ダメだったわ」と妻に電話をかけ、励ましの言葉が返ってきても、暗澹とした気持ちは払拭されなかった。
「あの夜はまったく寝付けませんでした。夜中に少しだけ眠れても、明け方に目が覚めてそれっきり……。やり直せるならやり直したい。もう五輪が始まってしまったという絶望感、悔しさがあった。こんな思いで眠れなかったのは初めての経験でした」
ドン底から引き戻してくれたのは、翌朝、電話をかけた妻からの一言だった。(つづく)