「大谷ルール」への支持はMLB労使紛争での“分かりやすい構図”がもたらした
遠くの出来事は、より明確で分かりやすく、直観的な情報によって判断が左右されるという点は、今回のウクライナ紛争に限らない。人々の日常生活の中にも見いだされるし、スポーツも例外ではない。
■労使交渉のマイナスを危惧
大リーグ機構と選手会が合意した、投手を指名打者(DH)として起用した場合に限り、降板後も打者として継続して出場できるという新しい規則は、その典型だ。
現時点で年間を通して投手とDHを兼ねる可能性のある選手がエンゼルスの大谷翔平だけであることから「大谷ルール」とも呼ばれる新規則は、今回の労使紛争で印象の悪化と観客数の低迷を危惧する機構が、話題づくりのために導入したともいわれる。
確かに、コミッショナーのロブ・マンフレッドは2017年ごろから大谷の動静に言及することがあった。そのため、人気回復の一環として大谷の存在を積極的に活用しようと考えても不思議ではない。
しかし、どれほど機構が力を入れても、観客の支持を得られなければ新規則が期待通りの効果を発揮することはない。むしろ「規則を変えれば大谷の活躍できる機会が増える」という構図の分かりやすさが、一部の専門家や記者たちの批判に対し、大多数の人の支持という結果につながっているのである。実際の成果は今季の終了を待たねばならない。それでも、少なくとも「大谷ルール」によって球界が開幕前に人々の注目を集めたことだけは間違いない。