秋山翔吾にメジャーは目もくれず…「2つの致命傷」と日本球界争奪戦の内幕
「代理人から(メジャー)球団のオファーはなかったと伝えられた。帰国して次の決断をしたい」
大リーグ、パドレス傘下の3Aエルパソを自由契約になった秋山翔吾外野手(34)がこう言った。
昨年まで2年間、レッズでは142試合に出場して打率.224、0本塁打、21打点。パッとしないまま今季は、開幕直前FAに。5月9日にエルパソとマイナー契約を結んで以降は16試合で打率.343(70打数24安打)、3本塁打、21打点。本拠地が打球のよく飛ぶ高地にあるとはいえ、3Aでは結果を残したように見えるが……。
■3Aでホームラン打てず…
「メジャーで本塁打を1本も打てなかった事実は重いですね」と、野球文化学会会長で名城大准教授の鈴村裕輔氏がこう言う。
「2000年代初頭、05、06年であれば打率が多少低くても出塁率の高い選手が重宝されましたが、13、14年くらいからフライボール革命とともに150三振しても30~40本、本塁打を打つ野手が求められるようになった。現在は非力な遊撃手だろうと、2ケタ本塁打が当たり前の時代。3Aの15試合で3、4本打った程度では評価はされませんし、長打力のある選手はもっと多くの本塁打を放っていますから」
秋山はレッズと20年から3年総額約28億3500万円の契約を結んでいるから、来季までの年俸は保証されている。獲得に大金の必要な選手ではないものの、それでもメジャーからのオファーはなかったのだ。
「34歳という年齢もネックです。3Aでの打率が秋山より1割低くても本塁打と打点が同じ25歳の選手であれば、そちらが評価されます。20代半ばの選手であれば今後の上積みが期待できるのに対し、30歳を過ぎた選手は下り坂だと判断されるからです。それに米国は日本とは比べものにならないくらい選手層が厚い。3Aに秋山くらいの成績を残す選手は山ほどいます」(鈴村氏)
秋山は日本でプレーした9年間の通算打率が.301。海を渡る直前の3年間はいずれも20本以上の本塁打を放った。しかし、その程度ではメジャーの野手として通用しないということだ。
古巣西武の渡辺GMは「オファーは出します」
そんな秋山をめぐって、日本球界では争奪戦になりそうな気配が漂っている。本命は古巣の西武だ。
10年ドラフト3位で入団し、19年まで在籍。チーム編成を一手に引き受ける渡辺GMは、秋山の入団時に監督を務めており、「当然、戦力として考えている。オファーは出します」と話していた。
しかし、秋山復帰なら台頭しつつある愛斗(25)や若林(24)らの若手の出番が失われてしまうのではないか。
ある球団OBは「それでも秋山は必要です」とこう続ける。
「彼は基本に忠実で、気の抜いたプレーなどは一切しない。バットはもちろん、練習と工夫に裏打ちされた外野守備にも定評がある。若手が秋山のプレーを見て学ぶことは山ほどありますよ。以前はベテランの栗山が外野手の手本になっていたが、今季はすべてDH出場ですからね」
■ソフトバンクや楽天も水面下で…
対抗馬はソフトバンクだ。「状況を調査していきたい」とは、三笠GM。昨季4位に終わったソフトバンクにとって、優勝は至上命令。それが開幕直後に栗原が上林と衝突して左ヒザを負傷し、今季絶望。その上林も打率3割と好調だったが、こちらも5月下旬に右アキレス腱を断裂し、やはり今季絶望となった。
3年目の若手・柳町(25)が打率.310と打っているものの、過去2年間は通算32試合。1年通して働けるかどうかは未知数と言わざるを得ない。さらに秋山が加入すれば、状況に応じてケガがちな柳田を休ませながら使うことも可能。柳田不在なら得点力は大幅ダウンでも、秋山がいればそれも回避できるのだ。
楽天の動きも無視できない。石井監督は秋山がレッズを自由契約になった4月、「ウチの外野は切磋琢磨できている」と話し、興味なさげだったが……。
「当時は元日本ハムの西川が本領を発揮していた時期ですからね。ただ、西川は5、6月とイマイチで、もっか打率.223。開幕から快進撃を続けていたチームは、西川の不振と歩調を合わせるかのように失速しつつある。島内も6月は2割ちょっとと、成績が下降している。昨19日にはソフトバンクに3タテを食らい、2位に転落。214得点はリーグ4位と貧打にあえいでいる。石井監督は自身も西武でプレー経験があるので、西武選手には太いパイプがある。水面下で狙っていたとしても驚きません」(楽天OB)
本命、対抗、大穴……。メジャー30球団が見向きもしなかった秋山の獲得に、日本では西武、ソフトバンク、楽天が名乗りを上げそうなのだ。