大谷を襲った「右手中指爪割れ」の波紋…回転数増で指先の負担過多、球界OBも経験「投げた瞬間真っ二つに」
川崎憲次郎氏「試合中、球の抑えが利かずに指を見たら…」
かつてロッテやインディアンスでプレーし、日米通算234セーブを挙げた小林雅英氏が言う。
「爪が割れる要因は人それぞれです。体調の変化はもちろん、投げる球種や握り、縫い目へのかけ方などによって、割れる場所が違ったりもする。直球だと真ん中、スライダーなら左斜め上(右投手の場合)が割れやすいようです。ボールの縫い目に爪が引っ掛かり、割れることもあります」
大谷の爪割れの原因として考えられるのが、ボールの回転数の多さだ。大谷の直球の平均回転数はメジャー1年目.2018年の2164回転(1分間換算)から年々上昇し、今季は2281回転に。抑えで登板したWBCの決勝戦では同僚のトラウトに対し、2686回転をマークした。
今季多投しているスイーパーもしかり。今季平均の2532回転は昨季の2492回転を上回り、WBCでトラウトを空振り三振に打ち取った際は2708回転を計測した。
「爪のケアには細心の注意を払っていると思いますが、一般的に速い腕の振りや筋力アップによって、ボールに一層の力を伝えることが高い回転数につながります。今まで以上に指先への負担が大きくなっている可能性はあります」(小林氏)
■中指は最も負担がかかる
ヤクルト時代、右手中指の爪割れを経験したという1998年沢村賞投手の川崎憲次郎氏もこう話す。
「試合中、球の抑えが利かずに指を見たら、キズ一つなかった爪が真っ二つに割れていたことが3度くらいありました。普段より調子が良く、指先でボールを押し込む力が大きくなればなるほど、爪が割れやすかった。投手によって割れやすさに差はあれど、大谷は年々パワーアップし、爪が割れるだけでなく、肩肘が壊れてもおかしくないくらいの球を投げている。いつも以上に指先に力が加わったことが爪割れの原因かもしれません」
さらに、前出の小林氏がこう指摘する。
「五指の中で最も長い中指は、ボールに接触する時間が一番長くなる分、最も負担がかかる。投手は指先の感覚が繊細。爪やマメが原因でフォームが崩れれば、肩肘にも影響が出る。爪は肉体のようには鍛えられませんからね」
大谷は今後の登板について、「いつも通りの日程でいけるかなと思います」と話したが、果たして今後も中指の爪は耐えられるのか。現地10日(日本時間11日)のアストロズ戦は「3番・DH」で出場し、1本塁打を含む4打数1安打2打点2三振だった。