ドジャース大谷翔平「年俸の97%後払い」は美談か…ぜいたく税回避の抜け道で他球団マネ必至
課徴金制度の盲点つく行為
ぜいたく税の計算上では、大谷の来季年俸は200万ドルでなく、4600万ドル(約67億円)になる。しかし、7億ドルを10分割した本来の7000万ドル(約102億円)と比べると、差額の2400万ドル(約35億円)が浮くことになる。大谷はその35億円を補強に投じてもらいたい。だから「カネだけではない」「自己犠牲」というのだが、本当にそうだろうか。
ぜいたく税は本来、戦力均衡を目的に導入された課徴金制度で定められたペナルティーだ。無制限にカネを使って有力選手を買い漁ることが可能なら、どうしたって金満球団が有利になる。その結果、特定球団が勝ち続ければ、メジャー全体の興味も薄れてしまう。そうならないように総年俸が一定額を超えた球団には罰金を科そうと、2002年の労使協定で発足した取り決めだ。
自分の年俸を後払いにすることでチームの総年俸を抑えたい、ぜいたく税の対象にならないようにしてチームを強化したいという大谷のスタンスは、この制度の趣旨から明らかに逸脱している。いわば盲点をつく行為ではないか。
これまでも年俸を後払いにする選手は何人もいた。米紙「スポーツ・イラストレーテッド」によれば、過去にメジャーで後払い契約をした最高比率は、サイ・ヤング賞右腕のマックス・シャーザー(39=レンジャーズ)が2015年にナショナルズと2億1000万ドル(当時約248億円)の契約を交わした際の50%。契約総額の一部を後払いでもらうのは、個人や家庭の事情によるケースがほとんどだった。
■■課徴金制度の抜け道をくぐり抜けることに
だが、大谷は97%。契約総額のほとんどを後払いにする目的は、ドジャースの年俸総額を抑えることだ。チームの勝利のためと言えば聞こえはいいけれど、根底にあるのは過去6年間プレーオフにすら進めなかった自分が、今度こそチャンピオンリングを手にしたいという私利私欲ではないか。個人や家庭の事情という理由は同じでも、結果として課徴金制度の抜け道をくぐり抜けることになる。
米経済誌「フォーブス」によれば、大谷の今季のスポンサー収入はメジャー最高の約3500万ドル(約52億5000万円)。年俸がまったくなくたって困らないくらいの稼ぎがあるからこその97%かもしれないが、仮に大谷の手法が認められるなら、他球団も追従するのは必至。97%とまではいかなくとも、似たようなやり方でぜいたく税逃れを画策、次々と大物を補強するようになるに違いない。大谷が先鞭をつけたはずの抜け道が他球団に踏襲されれば、ドジャースのひとり勝ちは長続きしない。