2005年「最初で最後のリーグ優勝」の瞬間 まさかグラウンドに立っているとは…
「バントはオレが捕るから、おまえは絶対に捕るな」
2005年、パ・リーグのプレーオフ第2ステージ。31年ぶりのリーグ優勝を目指すロッテは、2勝2敗の第5戦で3-2と1点リードで八回裏を迎える。八回表に代打で出場した私は、その裏から三塁の守備に就いた。
九回裏に無死一塁となり、マウンドへ向かうと、抑えの小林雅英(マサ)に冒頭のように耳打ちをした。第3戦でマサは打球処理の際に一塁へ悪送球していた。狙い通り、マサの投前への送りバントを私は猛然とダッシュして二塁で封殺。ロッテ在籍17年間で初めてのリーグ優勝を経験。その瞬間、私は三塁を守っていた。
試合前、選手サロンでボビー・バレンタイン監督はナインにこう暗示をかけていた。
「今日の試合、最後に自分たちがどうなっているかをイメージしてくれ」
ナインは1分間、目をつぶった。私はベンチから真っ先にマサの所に駆け寄る場面をイメージした。全員が勝利をイメージすることが大切だという。確かに不思議と負ける気がしなかった。当時、日本人の監督にそういう発想はあまりなかった。ただ、最後の最後、私がダイヤモンドの中にいるのは想像できなかった。試合後、ボビーを胴上げしていると涙があふれてきた。日本シリーズでは阪神に4連勝。31年ぶりの日本一になった。