柔道ウルフ・アロンが“弟分”斉藤立を語る「仏リネール選手はタツルに持たれることを恐れていた」
阿部詩の大号泣に思うこと
──斉藤選手は「4年後は自分が引っ張れる選手になり、個人でも団体でも金を取りたい」と。
「そうですね。そのままの気持ちでやっていってほしいですね」
──ウルフさんから見た斉藤選手の実力は? 4年後に金メダルを取る可能性はありそうですか?
「十二分にあると思います。ひとつは、すごく負けず嫌いなんです。気持ちの部分として、負けず嫌いというのは必ずないといけないもの。あとは体がデカいですよね」
──普段の取り組みは?
「練習はよくやりますね。やりすぎるのはよくない部分もあるんですけど、やっぱり練習の中で成長できる部分は大きいですから」
──モノが違うと感じる部分はありますか?
「組み手(争い)を禁止して、組み合った状態からスタートすれば、恐らく世界で一番強いと思います。それこそフランスのリネール選手は、タツルに持たせないようにと、組み手を全部切っていました。何で切るかというと、持たれたら怖いからです」
──フランスの英雄も、斉藤選手の力を認めていると。
「柔道には組み手がありますし、対策を立ててどうやって勝ちに行くかが大事です。地力を上げることに加え、そうした技術に磨きをかけていくと、もっとスキのない選手になるんじゃないかなと。タツルにはこういう話はあんまりしませんし、あくまで、僕の個人の考えでしかないですけどね」
──女子52キロ級2回戦で敗れた阿部詩選手が号泣したことを巡って、メディアやSNSで賛否が飛び交いました。
「やっぱり、あれだけ取り乱すほど大きなプレッシャーを背負って、今回の試合に懸けてたっていうことですよね。それだけの中で戦っていた。周りがとやかく言うことじゃないと思いますね」
──詩選手は団体戦で一本勝ちを収めましたが、個人戦からの気持ちの変化などは感じましたか?
「本人じゃないのでハッキリしたことは分からないですけど、切り替えよう、切り替えようとしていたんじゃないですかね」
(第3回につづく)
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パリ大会の柔道は審判の「誤審」「不可解判定」を巡る大騒動が巻き起こった。AI審判導入を訴える声もある。フランスとの団体決勝戦の出場選手を決めるデジタルルーレットでは90キロ超級が選ばれ、斉藤立と五輪3度制覇のリネールが戦った。場を盛り上げるための「やらせ」だと物議を醸したが、選手としてどう見ていたのか。
第3回は、それらについてあますことなく語ってもらった。