「がんになって生きるということ、死ぬということ」常蔭純一著
がんという病と闘い亡くなった、19人の著名人の最期の生の物語。
「漫画の神様」と呼ばれた手塚治虫氏は、平成2年に胃がんでこの世を去った。胃に不調を感じ、検査を受けたときには、すでに胃の全摘出が不可欠なほどがんが進行していたという。幸い術後の経過は順調で、すぐに3本の連載漫画の執筆を開始。まるで生き急ぐかのように精力的に仕事に取り組んだ。
亡くなる1週間前、手塚氏は混濁する意識の中でこんな言葉を口にする。「頼むから仕事をさせてくれ」。漫画を究めようと走り続けた、プロフェッショナルの姿がそこにあったという。
井上ひさし、本田美奈子、梨元勝、団鬼六など、彼らの終末との向き合い方と死にざまから、人生とは何かを学び取りたい。
(潮出版社 1500円)