ヌードアート本特集
ヌードは、画家の生きざまや反骨心を反映する題材でもあるという。性的な表現を規制する旧態依然とした社会や権力にあらがい、その声を筆に込めたのかもしれない。もちろん、神話の登場人物を描き続ける保守派もいた。ただし、策略なのか無意識なのか、独特のエロチシズムを匂わせる画家も。圧倒的な画力を持つブグローである。
有名な「ヴィーナスの誕生」はどうか。乳房や股間を手や髪で隠したボッティチェリのヴィーナスと比べると、明らかに開放的である。肢体をS字にくねらせたヴィーナスはかなりエロい。ほかに「ニンフとサテュロス」や「オレイアデス」でもギリシャ神話の精霊や妖精を描いているが、その動きやラインは相当淫靡だ。
また、ヌードには画家の性的嗜好を表す傾向もあるといえるだろう。
娼婦や踊り子をモチーフにした作品が多いドガ。特に、室内で水浴する女が多い。女性嫌いだったドガは「女性が最も嫌がるであろう赤裸々な水浴シーン」をわざと描いたといわれている。乳房を洗う「水浴」、尻を突き出す姿の「盥で沐浴する女」など、女性にとっては確かにえげつないシーンばかり。