「五〇年酒場へ行こう」大竹聡氏

公開日: 更新日:

 ほろりとさせる人情話もあれば、思わず噴き出す軽妙洒脱なやりとりも。

 たとえば赤羽の大衆酒場「まるます家」の石渡勝利さんは、まるで落語家だ。

「江戸弁風をしゃべる人で、まあ小気味いい。言葉が洒落ていてね、もはや寄席状態。50年以上、店を守る大将の人柄や面白さ、その場に交ぜてもらう楽しさが伝われば」

 著者自身、酒呑みの英才教育は父親から受けたという。その父が連れて行ってくれたのが新宿西口界隈の酒場だった。

「父はいろいろな意味で人生がうまくいかない人で、僕が12歳のときに出奔しました。でも、成人したころにはたまに会って酒場へ連れて行ってくれました。新宿の大人たちの間で呑む経験、それが酒の覚え初め。今これで飯を食ってると思うと、父には世話になったなあと。随分苦労をかけられたけれど、草葉の陰で喜んでいると思いますよ」

 父親とともに訪れた酒場「ボルガ」は今も健在で、今回の取材でも訪れている。

「五〇年酒場の多くが、客が息子や娘、甥や姪を連れてきているんですよね。あるいはそこで出会ったふたりが赤ん坊を連れてきたり、3代で通い続けているなんて話がぼろぼろあるんですよ。つまり、五〇年酒場とは誰かを連れて行きたくなる店なんです」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…