簡単 習慣を変えればカネが貯まる
「お金が貯まる『体質』のつくり方」 西山美紀 すばる舎
著者の西山美紀氏は、ライターとして、マネー関係の取材を数多く積み重ねてきただけでなく、自身の都区内のマンションを4年半で完済した節約の達人でもある。
本書の最大の特色は、お金が貯まる習慣を詳しく解説していることだ。世の中には、いわゆる節約本があふれていて、その多くが、これをやったら年間いくら節約できるといった具体的効能を競っている。しかし、一発でお金が貯まるといった秘策は存在しない。ダイエットと同じで、日々の積み重ねこそが、大切なのだ。例えば、著者の勧める「早起き」は、昔から「早起きは三文の徳」として、ことわざにもなっているほどだ。
その他にも、体を動かす習慣をつけるとか、自分は運がいいと思い込むなど、節約に限らず人生を豊かにする法則が次々に展開されている。
そのなかで私の心に一番刺さったのは、送料無料でなくても、欲しいモノだけを買うというルールだ。私は、ネット通販で送料を無料にするために、余計なものをずっと買ってきた。しかし、考えてみれば、追加で買った商品は、使わないことが多いのだ。さらに、心から賛同したのが、月に1万円でもよいから財形か積立預金をしなさいというアドバイスだ。私も著者と同様に新入社員のときから月1万円だけ積み立てをしてきた。その預金は、いまや400万円に育って、老後に大きな力を発揮しようとしている。
本書のもう1つの大きな特長は、女性の視点で書かれていることだ。だから、化粧品やファッションのことなど、中高年男性にあまり関係のない話題も含まれているのだが、逆に男性の発想からは絶対に出てこない、バランスのとれた生活習慣の改め方が、アドバイスされている。男性は、一般に猪突猛進型で、一点突破には強いが、女性は逆にバランス型で、全体を見渡すのが得意だ。
本書は、まさに生活全般を見渡して、実際にできることを書いている。むずかしい理論はなく、言葉もやさしく、分かりやすい。だから、すぐに読み終えることが可能だ。そして、女性の発想で書かれているからこそ、読み終えたら妻にプレゼントするというのも、十分にありだと思う。★★半(選者・森永卓郎)