「オペレーションZ」真山仁著
新総理大臣の江島隆盛は、就任早々、総理公邸地下の談話室に、江島が主宰する勉強会に参加している若手財務官僚たちを招集した。国の借金が1000兆円を超えている現在、このまま何もせずにいたら近い将来、デフォルト(国家破綻)は現実のものとなってしまう。日本がデフォルトしたら、世界経済も破綻するのは必至。それを防ぐためには、一般会計の歳出を半減するくらいの荒療治が必要だ。
それを断行するためのプロジェクトを「オペレーションZ」と名づけた。しかし、それを実現するには、年金支給一時停止および給付額半減、健康保険料と医療費自己負担の倍増、介護保険支給額半減という過酷な負担を国民に強いなければならない。
江島から密命を帯びた若手財務官僚たちは、秘密裏にこの不可能なミッションを遂行していく。しかしその前に立ちはだかるのは、内部の権力争い、官僚の抵抗、メディアとの情報戦、世論の反発……。
目を塞いで蓋をしている問題をこじ開けて、事態の深刻さを突きつけてくる、アクチュアリティーに満ちた近未来小説。
(新潮社 1800円+税)