「混血列島論」金子遊著
日本は単一民族であるという「単一民族神話」に対しては、これまで事あるごとに批判がなされてきたが、近年の日本礼賛ブームもあって、この神話はいまだに根強く生き残っている。しかし、ユーラシア大陸と太平洋上の島々の間に位置する日本列島は、古来人々が行き交う場所であり、DNA解析によれば、主流日本人は中国東北部、シベリア、中央アジアなどの種族が混血したものだと判明している。
本書は、文献とフィールドワークの両面から、日本列島(ヤポネシア)の混血であるがゆえの多様な文化の豊穣さを掘り起こしている。
著者の「混血列島」を巡る旅は樺太の先住民ウィルタ、台湾のタイヤル族という旧植民地の少数民族から始まり、北海道・二風谷のアイヌの映像を記録した医師・人類学者のマンロー、明治初期のアイヌの生活を紹介した女性旅行家イザベラ・バードの足跡をたどり、先島諸島の神事の意味を探る。さまざまな文化の混交を軸にした新しい民俗学の萌芽がここにある。
(フィルムアート社 3000円+税)