「空をゆく巨人」川内有緒著

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 蔡國強は1986年、初めて成田空港に降り立った。日本語学校に通いながら、作品をカバンに詰めて銀座の画廊を回ったが、対応は冷たかった。

 蔡は油絵の具と火薬を組み合わせて作品を作っていたが、東洋の文化では「一」がすべてを包含することから、火薬ひとつだけを爆発させて作品を作るようになる。

 そんな蔡の才能を見抜いたのが美術評論家の鷹見明彦だった。鷹見は平駅の近くで「ギャラリーいわき」を運営する藤田忠平に蔡の火薬画を紹介した。藤田が企画した展覧会で、開催前に7点もの作品を買った人物がいた。

 国際的なアーティスト蔡國強と、いわき市に「いわき回廊美術館」を造った人たちの出会いを描く、第16回開高健ノンフィクション賞受賞作。

 (集英社 1700円+税)

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