「グレタ たったひとりのストライキ」マレーナ&ベアタ・エルンマン他著、羽根由訳
迫り来る気候危機を訴え、世界に発信し続けるスウェーデンの16歳、グレタ・トゥーンベリ。彼女はなぜ、「気候のための学校ストライキ」を始めたのか。その後に何が起きたのか。グレタの母マレーナ・エルンマンが、グレタのこと、家族のこと、気候問題に関する活動のことを、夫やグレタの妹ベアタの言葉を交えてありのままに書いた。
すべては、グレタが11歳のとき、授業で環境問題に関する映画を見たことから始まった。グレタは映画のあいだ中、泣き続けた。その後、拒食症になって、ごく親しい人としか話せなくなり、うつ、アスペルガー症候群と診断された。差し迫った気候危機を全身全霊で感じ取ったグレタは、何もしようとしない大人たちに疑念を抱き、苛立ち、苦しんだ。
母マレーナは有名なオペラ歌手。父スヴァンテは元俳優で、娘たちが生まれた後、主夫を買って出た。両親はグレタによって気候問題に目を開かれていく。そして、グレタと一緒にウプサラ大学の地球科学研究所で専門家に学び、気候危機への理解と、政治家や企業家への疑念を深めていった。一家は、大量の温室効果ガスを発生する飛行機に乗るのをやめ、電気自動車で移動するようになった。
15歳のグレタがたったひとりの学校ストライキを決意したとき、両親は賛成ではなかったが、止めはしなかった。国会議事堂前に座る娘を、父は遠くから見守った。両親の不安をよそに、グレタはこの行動を通じてエネルギーを爆発させる。自閉症で拒食症の娘が新聞やテレビのインタビューに答え、大勢の人の前でスピーチするなんて、信じられなかった。グレタは自分の知識と言葉だけで、現在の世界秩序に疑問をぶつけようとしていた。多くの賛同と共感を得たが、誹謗中傷にもさらされた。母が書いたグレタの真実は、多くの誤解や臆測への反論にもなっている。
巻末に収録されたスピーチ集「グレタの主張」は、次世代への責任を放棄してきた大人の胸を刺す。
(海と月社 1600円+税)