「簡易生活のすすめ」山下泰平著
「簡易生活」とは、明治から昭和初期にブームとなった生活法。もともとは、西洋から入ってきた考え方で、徳富蘇峰ら知識人らが社会全体を改善するために提唱、その概念が庶民にも広まったという。本来の意味は「物欲に溺れずに簡素な生活を送り、思いやりを持って生きていこう」というものだったが、日本人が独自の解釈をして、別方向へと進化させたという。
当時の新聞や小説など、さまざまな資料に散見する簡易生活に関する記述を取り上げ、先人たちがどのように簡易生活を洗練し、ツールとして利用していたかを紹介する。
当時盛んに議論された「台所廃止論」や「玄関不要論」などに注目しながら、合理的な日々の生活や、疲れる人間関係を断ち切る方法など、明治人たちの知恵に学ぶ。
(朝日新聞出版 790円+税)