「太宰を読んだ人が迷い込む場所」齋藤孝著
明治生まれの太宰治が、今なお読者を魅了しつづけている。心中騒ぎや左翼活動に起因する警察沙汰、薬物中毒や酒がらみの愚行まで。読者にとって太宰の行状は「避けて通りたい難所」でありながらも、「その気持ち、わかる」と自分の代弁者のように感じるからだと著者は言う。そして太宰文学に潜む「毒」は、現代人の弱い心によく効く劇薬となりうるとも。そんな太宰文学から「輝く言葉」を取り出し、改めて作品を味わう文学ガイド。
若き日の太宰がノンフィクションのようにつづられている「東京八景」をはじめ、「滅びの美学」が描かれる「斜陽」などの有名作から「血の池地獄にすーっと降りてくる蜘蛛の糸」のような救いとなる知られざる短編まで。全作品から選りすぐりの名文を紹介。
(PHP研究所 940円+税)