「おぼえています、あのいくさ」浅香須磨子編著
9歳だった浅香は家が米軍の爆撃機に破壊されたため、母と弟の3人で祖母の家に向かった。空襲警報は出たが田舎だから大丈夫だと松並木の街道を歩いていたら、飛行音が聞こえた。「艦載機や!」。松の木すれすれの高さから、風防眼鏡の操縦士が浅香を見つめて撃ってきた。私、狙われてる。(「何でそう言えないわけ?」)
中村六郎は旧制中学に入学したが、授業もなく、毎日、軍事教練と防空訓練ばかり。校庭には工場から疎開してきた赤さびた織機が放置されている。その横に立てられたわら人形に向かって突進し、木銃でその左胸を突き刺すのだ。(「毎日が殺戮の訓練」)
殺したり殺されたりが日常だった戦争時代の記録。
(遊友出版 1800円+税)