「名探偵と海の悪魔」スチュアート・タートン著 三角和代訳
17世紀前半、当時バタヴィアと呼ばれていたジャカルタからアムステルダム行きの船・ザーンダム号が出航しようとしているところから物語は始まる。船に乗り込むのは、東インド会社バタヴィア総監のヤン・ハーン、その夫人のサラや娘のリアら。さらに名探偵として名を馳せていた通称サミーことサミュエル・ピップスが、身に覚えのない罪で囚人として一緒に護送されることになっていた。ところが出航間際に包帯で顔を覆った男が現れ、「この船は呪われている、乗客は破滅を迎えるだろう」という言葉を残して、炎に包まれ謎の死を遂げる。危険を察知し調査する必要性を感じたサミーだったが、捕らわれの身で自由に動き回ることができない。そこで、サミーの助手を務めるアレントと、この航海に不安を覚えていた総監夫人サラに捜査を託すのだが……。
デビュー作「イヴリン嬢は七回殺される」でコスタ賞最優秀新人賞を受賞し、同作が日本でも週刊文春ミステリーベスト10で2位となった著者による最新作。大海原に囲まれた密室である船を舞台に繰り広げられる決死の謎解きから目が離せない。
(文藝春秋 2750円)