「伊賀の人・松尾芭蕉」北村純一著
俳聖と称えられた松尾芭蕉の生涯と、その素顔に迫る評伝。
芭蕉は、藤堂高虎を初代藩主とする藤堂藩の下級武士の家に生まれた。若いときからその学才は城下に鳴り渡り、藤堂新七郎家の若様の小姓に抜擢される。若様は無類の俳諧好きで京都を代表する俳諧宗匠の北村季吟に師事。芭蕉も学友としてその薫陶を受けた。
しかし、若様が25歳で早逝。芭蕉は二君に仕えることを潔しとせず、主家を去り、京の季吟のもとで修練を積む。一方で、漢学などの武士の素養にも励んだという。そして俳諧師として生きる道を求め、まだ新人活躍の場が残っていた江戸を目指す。
生涯の大半を旅に費やした芭蕉の句を紹介しながら、その旅の軌跡と人生をたどる。
(文藝春秋 935円)