「ラストバトル」草凪優著
主人公は、元プロレスラーの川岸幸正。10年前に現役引退してから、ラーメン屋を営んできたものの経営が思わしくなく、所有していたマンションを手放すところまで追い詰められていた。そんなとき、かつて所属していたインターナショナル・プロレスの後輩たちが川岸を訪ねて店にやってくる。新興団体WWGに所属する若手エースのナカタシンジが、川岸との対戦を望んでいるというのだ。人気プロレスラーが相手なだけに、東京ドームでの興行ができ、ファイトマネーは1000万だという。
客足が落ちて会社をたたむことになったと嘆く後輩たちは、最後に川岸メインの興行を打ち上げたいと迫るが、川岸は今さら復帰はないと対戦を断って追い返した。しかし、その後川岸が復帰するとの誤報が報道され、ラーメン屋にコアなプロレスファンたちが押しかけ、後輩からも挑発されるうち、50歳の川岸の中にかつての闘志が蘇る。
「この官能文庫がすごい!」大賞を受賞し、官能小説界を牽引してきた著者による、ハードボイルド・プロレス小説。中年レスラーの復帰劇から闘う男へのエールが伝わってくる。
(竹書房 1870円)