「動物たちのナビゲーションの謎を解く」デイビッド・バリー著 熊谷玲美訳

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 人間は目的地を目指すとき、かつては地図やコンパスを、今ならスマホのGPSを頼りに進んでいく。一方、動物や昆虫はどうか。手ぶらであるが、狩りに出かけたあと自分の巣に間違いなく戻り、また産卵のため自分の生まれた場所にちゃんとたどり着いている。

 こうした動物たちのナビゲーションスキルの不思議に注目したのが本書だ。科学者による研究や取材によって、彼らがどのように進む距離や方向を決めるのか、その謎を解き明かしていく。

 たとえばアカサムライアリは、獲物を持ち帰るとき行きのコースを正確に引き返す。匂いの跡に導かれているのかと思いきや、実は視覚的手がかりを利用していたことが実験で明らかになった。

 北アメリカ西部の高山地帯に生息するハイイロホシガラスは広範囲にわたって餌を隠す習性があるが、彼らも視覚を利用。貯蔵場所の周囲にあるランドマークと、遠くからも見える岩や木など目立つ特徴を記憶し、2段階のプロセスで見つけ出している。

 ほかにもミツバチは内蔵する「時間補正式太陽コンパス」により方向を定めること、夜間に渡りをする多くの鳥が星のパターンを活用しているなど、動物たちの驚異のしくみを明らかにする。

(インターシフト 2640円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

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